August 07, 2006

オンセン・タバゴとウマミガール

vege

El Bulli」のフェラン・アドリア(スペイン)、「The Fat Duck」のヘストン・ブルメンタール(イギリス)、そして「Pierre Gagnaire」のビエール・ガニエール(フランス)。3人の共通点といえば?

世界でもトップレベルのシェフ!? 行ってみたいレストランベスト3!? ええ、確かにそうとも言えますが、その答えは、今、私の頭の中をほとんど占領状態(インド熱をおしのけて!)のMolecular Gastronomoy(分子料理法)。

いえ、別に興味がインドからそっちに移ったわけじゃないんです。今週末〆切りのエッセイのトピック。このままだと当分更新できないなーと思っていたけれど、考えてみるとアサイメントと全く関係のないことを書いてるとなんとなーく後ろめたい気持ちになるけれど、関連したことメモ代わりに書けば一石二鳥じゃないかと思いついたんです。

ちなみに上記3つのレストランはThe Worlds 50 Best Restaurants 2006のベスト3でもあります。で、アジアのベスト1レストランはインド、ニューデリーのBUKHARA(といっても44位ですが)。シドニーのTetsuya'sは5位。

分子料理法というのは、フランスの化学者、エルベ・ティス教授らによってはじめられた"料理の常識を化学的に見直し応用する"という新しい分野。"全ての料理は物理化学式で表現可能"なんだそうです。で、そっから例えば、ベーコンエッグのアイスクリームとか奇想天外な料理も続々生まれちゃったりしています。でも、ヘストン・ブルメンタール氏によれば、その昔、アイスクリームは必ずしも甘いってわけじゃなかったそうです。キュウリのアイスクリームはビクトリア朝の定番スターターだったとか。

フェラン・アドリア氏はそっからまた独自の道を突き進んでいます。忙しい現代人のために、Slow Foodに対抗してか、Fist FoodならぬFast Goodという超こだわりハンバーガーなどが食べられるハイクオリティーなファースト・フード店をNH Hotelsと共にスタートしてみたり、スーパーとのコラボでポテトチップなどのコンビ二的材料を使った料理本などを出版。とはいえ、本業(?)のレストラン「El Bulli」は相変わらずの敷居の高さですよ。ちなみにそちらの方は、料理本の値段も桁違いでびっくりです。

彼は特別な調理器具を使うことでも知られていますが、あの魅惑のムースを作リ出す「エスプーマ」には日本では今年の4月まで未認可だった亜鉛窒素が使われています。炭酸ガス使用の日本製のものが国内向けに売り出されているようです。

と、なんだか分子料理法ってわけがわからないし、邪道な感じもするし、その上有害!?と思われそうなネタを並べてみましたが、実は日本料理と深ーいつながりがあるんです。


たとえば、ヘストン・ブルメンタール氏は昆布だしを積極的に使うことでも知られています。1908年に発見されたにも関わらず、1世紀近く世界的には認められていなかった五番目の味覚「Umami」は分子料理法のキーワードともいえるかもしれません。「味には境界がないことを実証したい」とはブルメンタール氏の言葉ですが、その通りともいえるようなUmamiブームが料理界に起こっているようです。

東京とロンドンに事務局を置く「Umami Information center」ができていたり、去年末アメリカで「The Fifth Taste: Cooking with Umami/ Anna Kasabian&David Kasabian』」という本が出版され話題を呼びました。その本についてふれた記事、タイトルに思わずにやりとしてしまいました。「 I think I’m a umami kind of girl」。私も言うまでもなくウマミ派girlですけどね。ところで、かのブリヤ・サヴァランは「うまみ」らしき存在に薄々気づいていたようです。さすが。

Umami Information centeのHPには「Umamiワールドマップ」が紹介されています。バルミジャーノ・レッジャーノは昆布の次にUmami成分が多い食品。あと、意外なところでトマトも高Umami食品。世界的人気がうなずけます。で、オーストラリアにも世界に誇るUmami食品があります。日本でいえば納豆のように、オージーの食卓には欠かせない物で、写真を撮りたいとハウスメイトに頼んだら、最高の笑顔と共に「ハイッ!」と張り切って手渡されました。ええ、見ての通り「ベジマイト」です。この世でコワいものの一つにあげている人も多いと思われますが(笑)

そうそう、NYには日本料理店でも日本人経営でもないUmami Cafeも登場しているようです。

と、Umamiについて長々と語ってしまいましたが、もう一つ。分子料理界でも注目のジャパニーズフードといえば、温泉卵。Pierre GagnaireのHPの中でも1500年前から実践されているテクニックとして紹介されています。ただし、onsen tabago(オンセン・タバゴ)としてですが(笑)東京にもレストランができてるらしいのに、一体どうしたんでしょうねー。さて分子料理界のオンセン・タバゴは、65度のオーブンで1時間から2時間かけて料理されます。卵白は62度で固まりはじめ、卵黄は68度。その間の65度ならば、ちょうどよい加減のオンセン・タバゴもどきのできあがり!この温度には実はもう一つ秘密があります。サルモネラ菌が死滅する温度は60度から。なので安心してトロトロ卵が食べられるってわけ。ちなみに"ukokei egg(烏骨鶏の卵)"で作られたものがとりわけ美味しいとも一言付け加えれています。

で、話は突然変わりますが、この前からの課題だった赤米問題。分子料理関連の本に答えを求めてみましたが、残念ながらこれは!というような記述は見当たりませんでした。もっとお米にも迫ってほしいものです。自分で何度か試してみたところ、水をかなり多めにして炊飯器で普通に炊くということで問題は解決される気がしてきました(イエスタデイ伊藤さん、お騒がせいたしました)。スリランカの赤米はちょっとヤワなので、水につけて炊くと、ダメみたいです。鍋でも炊いてみるつもりでしたが、赤米がなくなってしまって断念。で、お店には今、古い売れ残りの赤米しかないので、当分実験はおあずけです。

ということで、今日も長くなったなー。まとまりもなく終了です。

tiaradrop at 22:01│Comments(8)TrackBack(0)clip!Foodie 

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この記事へのコメント

8. Posted by chili   August 15, 2006 15:55
★ふねちゃん
分子料理の夕べでも、ウマミは話題になりました。そこでは、多分、西洋の人達にもわかりやすくということだと思うんだけど、パルメザンとトマトに多く含まれていて、イタリア料理はウマミの料理だと紹介されました。でも、ウマミをはっきり感じるかどうかは個人差があるとのこと。だけど、そうだなー、日本でいえば、一番だしを飲んでみた時に他の4つの味覚と違う何かを感じるか?かなー、やっぱり。ちなみに人間というか動物がはじめてウマミに出会うのは、母乳を飲んだ時とも言われているらしいです。イギリスから招待された化学者も生き物にとって最も大切な味覚だと力説していました。
7. Posted by ふね   August 14, 2006 07:26
うわー、なんだか簡単な講義を受けたような。笑
ちっとも理解はしていませんが、おもしろかったです。

実は私、旨味ってどの感覚のことなのか、はっきりとは特定できません。。。日本の恥??^^;
でもトマトも昆布も大好きなので、きっと旨味ガールなんじゃないかしら?

マもバも唇を使って出す音で、次が濁音の「ゴ」だからね、強い英語訛り(母音をやたら伸ばす)で読まなければ、それっぽく聞こえるんじゃないでしょうか… いや、英語で書いてあるからそれも無理な注文ですが。
6. Posted by chili   August 09, 2006 17:26
★シャスラーの女王 さん
寒いんでしょーねー。メルボルン。
アデレードは春の予感がしていますが。

マーケット散策はぜひしたいと思っています。
情報ありがとう!
5. Posted by シャスラーの女王   August 08, 2006 16:32
お〜、いよいよメルボルンに上陸ですか。
先日一足早く見てきた限りでは、かなり
冬枯れ感のある街並みでしたよ。

イケてるお店が点々とあるので、シドニーほど
簡単にお店が探せる環境ではありませんが
楽しんできてくださ〜い!

クィーンヴィクトリアマーケットと
サウスヤラにあるプラーランのマーケット
お時間があったら是非覗いて見てください。
アデレードとのマーケットの違いが
よくわかると思います。
4. Posted by chili   August 08, 2006 12:32
★イエスタデイ伊藤さん
モルディブ・フィッシュ!そうそう、私もそれが気になり、マップでチェックしてみましたが、載っていませんでした。分子料理関連の本にも、日本のかつお節は独自の魚の保存方法としてとりあげられているのですが、モルディブ・フッシュの存在さえ書かれていません。非常に面白い食材だと思うんですけどねー。でも今のところ、インドで食べられているという情報は入ってないんです。なぜスリランカだけで多用されているのか、調べてみたいなーと思っています。モルディブでは何百年も前から作られていると書かれていました。
3. Posted by chili   August 08, 2006 12:26
★シャスラーの女王 さん
残りのオーストラリア生活、存分に満喫してくださいね。
オンセン・タバゴの件は、レストランのメーリングリストの登録時に、指摘してみました(笑)
Umamiはどこでも大活躍ですね。

ところで、次の日曜日、ついに初メルボルンの予定です。今日、チケットは予約しました。火曜日からは授業なんで、2泊しかできませんが、分子料理の夕べに出席します(笑)ちょうどいいタイミングで行われると聞き、これはぜひ行ってみないと!とかなり期待しています。が、どの程度の分子料理なのかは不明です。
2. Posted by イエスタデイ伊藤   August 08, 2006 09:51
Umami食品としては、スリランカのモルディブ・フィッシュもなかなかじゃないかと最近思います。かつお節のことなんですが、日本みたいに薄く削るんじゃなくて、フレーク状にして煮物や和え物に入れるんだけど、味に深みが出て美味しくなるんですよ。

ところで赤米問題、炊飯器で解決とは。こちらでは結局赤米入手を断念し、日本の玄米をいかにスリランカの赤米風に炊き上げるかで試行錯誤しました。全く精米していない玄米だとやや粘り気とやわらかさに欠けるし、かといって七分づきだと粘りが出過ぎるので、玄米をほんの少しだけ精米してもらい、黒米を少し混ぜて全体に赤い色を付けてソレ風に見せる、という方法で落ち着きました。
1. Posted by シャスラーの女王   August 08, 2006 09:39
久々のおじゃまです!
本当に興味深いテーマを勉強されているなぁと
改めて思います。

しかし、温泉たまごがオンセンタバコに
変身とは・・・・

サキ→酒
イダマミ→枝豆
タバコ→タマゴ

勝手に日本語を曲げていわんでくれ!
しかもタバコって、食べられませんから!!
日本人として強烈にツッコミを入れたくなり
かつ聞くたびにむず痒い思いをします。

umamiの話ですが、たしかにパルジャーノ
レッジャーノはアミノ酸の結晶がジャリっと
感じられるものほど、旨みを感じられますよね。
ミモレット、パルミジャーノなどのハード
チーズは、日本酒ととても合うので、酒の
ツマミにもUmamiの要素は欠かせない、という
わけです。

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